障害を語るときに使う英語表現を解説します 〜障害の社会モデルを中心に〜
今回紹介する表現は「disability」「impairment」「disorder」「social model of disability」です。
ジェンダー編、セクシュアリティ編とだいぶ量の多い配信をしましたが、知り合いに
一度に読む量が多いと「後で読もう」になって結局忘れちゃったりしそう
大事な内容だから有料の人しか見れないのはもったいない
というフィードバックをもらいました。
確かにそうだなと思ったので、今回から1つ1つの配信を短めにして全員にお届けします。有料会員向けのコンテンツは別の企画を考えているのでそちらをお楽しみに☺️
では早速行ってみましょう。
今回のテーマは「障害」です。

disability
まず前提として、障害という言葉が英語でどのように表現されるのか。最も一般的な言葉は、disability です。
able(できる)に「分離」「剥奪」「否定」などを意味する接頭辞 dis- を付けて disable(できなくさせる、能力を剥奪する)。そしてそれの名詞の形が disability です。
この解釈の背景には、障害というものが当事者の身体や精神に内在的に存在するのではなく、人間の身体や精神の多様性を無視した社会設計によって排除された結果、特定の身体や精神を持つ人が何かを(社会設計によって)できなくさせられている、という考えがあります。
たとえば階段の高さが5cmくらいだったら、階段しかない駅やビルでも移動できる人が増えます。逆に30cmくらいだったら、移動できる人が一気に減ります。つまり階段の高さ一つとっても、それによって障害者と呼ばれる人数が変わるのです。そう考えるとこの「社会設計が障害を作り出している(特定の身体や精神の人々を disable している)のだ」という考え方には、説得力があります。
impairment
では、そうして排除されていたり、「できなくさせられている」人々が持っている身体的あるいは精神的な特徴のことは、なんと呼ぶのでしょうか。
たとえばサイレンや駅のアナウンスなど音が聞こえて認識できる前提でこの社会が設計されているため、音が認識できない/しづらい人は情報を迅速に手に入れることを disable されている——それは disability の一例です。しかしそもそも「音が認識できない/しづらい」ということ自体には、名前はあるのでしょうか。
これは impairment と呼ばれ、身体的・精神的な機能の低下や喪失を意味します。
先ほど説明した disability(社会設計によって「できなくさせられている」こと)とは明確に区別されます。
disorder
他に日本語で「障害」と呼ばれるものに、disorder という言葉があります。
今はもう使われなくなった表現ですが、性同一性障害は英語で gender identity disorder でした。ちなみに現在は性別不合 gender incongruence と呼ばれています。
染色体や生殖腺の症候群・疾患群の総称である性分化疾患も、英語では disorders of sex development と呼ばれます。ちなみに disorders ではなく differences という言葉が使われることもあります。
disorder は impairment と同様に身体的・精神的な状況を指す言葉ですが、必ずしも機能の低下や喪失を伴うものではなく、単に「典型的ではない状況である」(医療的には「異常である」と言うかもしれません)ことを意味する言葉です。
social model of disability
さて、このように「障害」という言葉にはいくつもの英語表現が存在します。しかし、英語圏の人たちは昔からこんなふうに細かく分けて考えていたのでしょうか。昔から「disability は社会設計の責任だよね」なんていう考え方をしていたのでしょうか。
そんなことはありません。1970年代〜1980年代まで、ほとんどの人々は(当事者も含めて)impairment という言葉も disability という言葉も、大して区別していませんでした。
ではその時期に何があったのか。
それは、障害者の活発な当事者運動です。当事者らが「私たちを『できなくしている』(disable している)のは社会設計である」という主張をし始め、それがのちに「social model of disability(障害の社会モデル)」として理論化されました。
逆にそれまでの全て個人の問題に還元するような、障害を治療や支援の問題としてしか捉えない考え方は、障害の医学モデル(medical model of disability)として批判的に捉えられるようになりました。
今日はここまでにしましょう。
障害編の次回以降では以下のような内容を解説していきます。
社会モデルは万能か? 相互作用を重視する新しい ICF という考え方とは?
ableism も disableism も「障害者差別」?
障害のある人々をどう呼ぶのが適切なのか?
Deaf の D はなぜ大文字なの?
「合理的配慮」は誤訳?
元々障害を指す言葉が侮蔑語として使われている事例
……その他色々用意してます。
勉強になったな〜と思ったら「いいね」とか拡散お願いします。
ではでは。
瀬戸マサキ

