ジェンダー関連の英語表現を11こ紹介します
「呼ばれたい代名詞」「トランスであることを見破られる」「産む・産まないは私が決める」「性的欲望の対象」「中絶の権利」「〇〇としてパスする」など、ジェンダーに関する11個の英語表現を、例文と解説とともに紹介します。
今日のテーマは「ジェンダー関連の会話でよく出てくる英語表現」として以下の11個の表現を取り上げます。
知っている単語でも、実際にどんなふうに文の中で使うのかわからない、どんな背景がある言葉なのかわからない、という人は多いと思います。ぜひ解説もしっかり読んで、身につけましょう。
gender assigned at birth
AFAB / AMAB
birth control
abortion
reproductive
stealth
your preferred pronoun
clock
pass as 〇〇 / pass for 〇〇
the glass ceiling
(sexual) objectification
ちなみに、今後も様々なトピックをピックアップして英語表現を紹介する予定です。ジェンダー関連もまたその2、その3、と増やしていきます。
まずは近いうちに「セクシュアリティ編」「障害編」を配信する予定です。
どうぞお楽しみに!
では今回の英語表現の紹介と解説をどうぞ↓↓↓
gender assigned at birth
意味
「出生時に割り当てられた性別」
例文
Most people are attracted to someone, not based on their gender assigned at birth, but on their perceived gender.
(誰かに惹かれる時、ほとんどの人は相手の出生時に割り当てられた性別ではなく認識された性別に基づいて惹かれている。)
備考
perceived gender(認識された性別)という表現も重要なので覚えましょう。文脈によっては「周囲に思われている性別」だったり「特定の誰かに思われている性別」だったりします。今回の例文では「惹かれを感じる人」本人にとってどう思われているか、という意味になります。
性分化疾患・DSD(インターセックスという言葉を使う人もいます)の文脈では性別の「割り当て」という言葉が別の意味で使われてきた歴史がありますのでご注意ください。
AFAB / AMAB
意味と発音
AFAB = assigned female at birth(発音は「エイファブ」)
「出生時に女性と割り当てられた」
AMAB = assigned male at birth(発音は「エイマブ」)
「出生時に男性と割り当てられた」
例文
A: Are they AFAB or AMAB?
(あの人って出生時に女性って割り当てられたのかな、男性って割り当てられたのかな)
B: It’s none of your business.
(お前には関係ねえだろ)
備考
例文で表した通り、AFAB とか AMAB という個人情報は基本的に本人が必要に応じて開示したり表現するもの(あるいは第三者が本人の許可や要求に応じて表現するもの)であって、勝手に「あの人はAFABだ」「AMABの彼女は〜」などと言っていいものではありません。
トランス差別的な人々は an AFAB person を a biological woman と同義だと主張するかもしれませんが、AFABという言葉を使うことで「ジェンダーとは割り当てられるものだ」という前提を敷くことができます。
birth control
意味
「避妊」「バースコントロール」
例文
Access to birth control is a fundamental matter of bodily autonomy, not a subject for public debate.
(避妊へのアクセスは身体的自律権の根本的な問題であり、公衆の議論の対象ではありません。)
備考
birth control は「避妊方法」や「避妊具」などの具体的な物を総称して指すこともありますが、「避妊すること」という概念として使われる表現でもあります。
具体的な物の総称としての birth control の例文
I use birth control.
(私は避妊しています)Birth control can be used for a variety of reasons.
(避妊具を使う理由は様々です)
概念としての birth control の例文
I don’t know much about religious debates over birth control, nor do I want to.
(避妊に関する宗教的な議論についてはあまり知らないし、知りたくもないです)
contraceptives という言葉もありますが、こちらは避妊方法や避妊具など具体的な物だけを指します。contra- は「対抗する」という意味のカウンターと関連する接頭辞で、-ceptive は conception(受胎)からきています。
abortion
意味
「中絶」「堕胎」
例文
Banning abortion does not stop abortions; it only stops safe abortions, disproportionately affecting those already marginalized.
(中絶の禁止は中絶を止めない。それは安全な中絶を止めるだけであり、すでに社会的に疎外されている人々に不当に大きな影響を与える。)
※ disproportionately という言葉については大昔に動画で解説したものがありますのでぜひご覧ください。
備考
よく使われる表現は以下のようなものがあります。
abortion rights(中絶の権利)
anti-abortion(中絶反対の)
中絶に反対するということは妊娠を強制的に継続させることだ、という考えから forced pregnancy(強制的妊娠)という言葉を使う人もいます。
中絶の権利の話題では、少なくとも北米では pro-choice / pro-life という二項対立が前提化されています。
pro-〇〇 は「〇〇に賛成の」という意味です。つまり pro-choice は「選択に賛成である」=「中絶の権利に賛成である」、pro-life は「生命に賛成である」=「中絶の権利に反対である」という言い方です。
しかし pro-life という表現を使う中絶反対派については中絶賛成派から「妊娠中絶の禁止にばかり力を入れており、出生後の乳幼児の貧困、医療、教育、児童福祉といった支援にはあまり関心がない」「銃規制に反対しておいて何が pro-life だ」と批判されています(中絶反対派はたいてい右寄りなので福祉の縮小や銃規制反対を主張しているため)。
※ 実はこの記事の冒頭にある画像にも「Focus on the born(もう生まれた子どもに焦点を当てろ)」という文言とともに銃規制を表すイラストが描かれたプラカードを持った人が映っています。
reproductive
意味
「再生産(子どもを作ること)の」「生殖の」
よくある表現
reproductive rights(生殖の権利)
reproductive health(生殖に関する健康問題)
reproductive justice(生殖の正義)
例文
Reproductive justice means having the power to decide if, when, and how to have children, and the right to raise them in safe and healthy environments.
(生殖の正義とは、子供を持つか、いつ持つか、どのように持つかを決定する力を持ち、かつ、安全で健康な環境で子供を育てる権利を持つことを意味する。)
備考
生殖の権利と日本語で言うと「産む権利」限定に聞こえますが、実際は「産むか産まないか」「いつ産むか」などの生殖に関するあらゆる自己決定権のことを指すことに注意しましょう。
stealth
意味
「自分がトランスジェンダーであることを周囲に明かさず、自認する性別の人間として日常生活を送っている状態である」
例文
The decision to go stealth is often driven by the need for safety in a society where transphobia remains a systemic threat.
(ステルスにするという決定は、トランスフォビアが構造的な脅威であり続ける社会において、安全を確保する必要性に迫られてなされることが多い。)
よくある表現
go stealth(ステルスになる)
live in stealth(ステルスで生きる)
your preferred pronoun
意味
「あなたが呼ばれたい代名詞」
例文
What is your preferred pronoun?
(どの代名詞で呼ばれたいですか?)
備考
pronoun は「代名詞」
代名詞の they/them については以下の動画もぜひ
clock
意味
「(人を)トランスジェンダーであると見破る」
例文
The constant effort to clock trans individuals reflects a societal obsession with enforcing gender norms.
(トランスジェンダーの人を見破ろうとする絶え間ない試みは、ジェンダー規範を強制しようとする社会的な執着を反映している。)
備考
LGBTQ+コミュニティや周辺のみで通じる口語である点に注意しましょう。
unclockable(全然見破られないような)という派生語もあります。
read も同じ意味で使われますが、これは比較的悪意を持った見破りである点に注意しましょう。
pass as 〇〇 / pass for 〇〇
意味
「〇〇であると周囲に認識され、通用する」「パスする」
例文
In many environments, being clocked can lead to immediate harassment or exclusion, making passing a matter of survival rather than vanity.
(多くの環境において、トランスだと見破られることは即座に嫌がらせや排除につながりかねず、パスすることは虚栄心ではなく生存の問題となっている。)
備考
一緒に使う前置詞は as と for の2つがありどちらも間違いではありませんが、トランスの文脈では as の方が無難です(pass for は若干「本来は違うものが、そう見える」というニュアンスを持っているため)。文脈でわかる場合は前置詞を使わず単に pass だけを言うことも多いです。
passability(パスする度合い)という言葉もあります。
〇〇-passing(〇〇としてパスしている)という表現もあります。
cis-passing(シスとしてパスしている)
White-passing(白人としてパスしている)
straight-passing(異性愛者としてパスしている)
the glass ceiling
意味
「ガラスの天井」(資質や成果に関わらず、女性やマイノリティが組織内での昇進を阻まれる、目に見えない不当な障壁)
例文
Despite formal policies on diversity, many women still hit the glass ceiling, finding their career progression stalled by invisible gender-based expectations.
(多様性に関する正式な方針があるにもかかわらず、多くの女性がいまだにガラスの天井に突き当たり、目に見えないジェンダー規範によってキャリアの進展が阻まれている事実に直面している。)
The glass ceiling is often much thicker and harder to break for women of color, who face the intersection of both racial and gender discrimination.
(人種差別とジェンダー差別の交差点に立つ有色人種の女性にとって、ガラスの天井はしばしばより厚く、打ち破るのが困難なものとなる。)
(sexual) objectification
意味
「(性的)物象化」「(性的な)客体化」
(人間を感情や意志を持った「主体」としてではなく、道具やモノ、あるいは鑑賞の対象である「客体」として扱うこと)
例文
The objectification of women in advertising is not just about aesthetics; it is a structural tool used to reinforce traditional gender hierarchies.
(広告における女性の客体化は単なる美学の問題ではなく、伝統的なジェンダー階層を強化するために用いられる構造的な道具である。)
備考
他にもこんな表現がある
subject 主体 ↔︎ object 客体
subjetive 主観的 ↔︎ objective 客観的
agency 主体、主体であること
an object of sexual desire 性的欲望の対象
女性が歴史的に性的に「客体」とされてきたことは、単に「感情や意志があること」だけが無視・否定されていたのではなく、女は性的欲望の主体になどなり得ない、という偏見や押し付けがあったことも意味しています。
以上です
こうしていろんな表現を改めて見てみると、うんと昔から戦ってきたフェミニストの姿や、今まさに激しいトランス差別の嵐の中生きているトランスの人々の姿が目に浮かびます。
自分の身体の安全のために戦わなければならないような社会が、これらの言葉を生み出してきたんですよね。
そうして時代を超えて地域を超えていろいろな人たちがジェンダーという問題に直面させられてきたんだな、という、painful な truth を感じながら書いた文章となりました。
近いうちに今度は「セクシュアリティ編」と「障害編」を配信する予定です。ジェンダー編もまたそのうちやるつもりです。どうぞお楽しみに。
瀬戸マサキ

